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第5の柱 夜間頻尿の自由研究(最下部にデータあり)

夜間頻尿の生活指導の効果

【夜間頻尿の治療と生活指導】      この成果を学会発表で下記に示しています。
  夜間頻尿は色々な要因を持ち、まさに深淵な課題であるといわれます。また、排尿障害の症状の中で、もっとも生活の質に影響を与えます。当院では、2011年頃から診察時に夜間頻尿について必ず質問し、回数、睡眠時間、尿量、覚醒時の意識調査などを聞いて記録し、集計するように心がけています。排尿日誌は意見が食い違う場合に確認のための作業として行なっております。

  当院の集患の特徴を生かし、治療の一環として夜間頻尿を改善する生活指導をつくるために、統計的に色々考察したり、他の分野の役立ちそうな知見を拾い集めています。いわば、自由研究みたいなもので、自主的な学習活動で得られた知見を積み上げて当院独自の生活指導を作成し、その成果を上げるために努めています。もちろん夜間頻尿ガイドラインを重視しながら、患者さんに近い開業医として夜間頻尿のフィールドワークを行い、泌尿器科実地医療でとして夜間頻尿をいかに減らせるか、工夫をしています。これは泌尿器科領域に限らず幅広い人体の知識を取り入れる必要があり、自分自身のアンチエイジングのためにも垂範率先、並走しているつもりであり、日々興味深く診療しています。
 
  当院では、夜間排尿回数が1回以内になるように指導をし、投薬と同時に夜間尿量と睡眠の自己管理をしてもらうようにしています。どうしても3回以上が続く難治性の場合があるのも事実であります。
 
    まずは生活の見直しも必要です。生活領域での自己管理である程度は減らすことは可能です。
やってみて、繰り返し、成功体験が得られれば、それが習慣となり、やがて体質まで良い影響が出て生活習慣病の防止や改善にもつながるかも知れません。生活領域の管理不足の症状を病気のせいにしたり、管理不足の症状を「病気」と思わないことです。薬の治療とともに、自己管理が基本です。
 

定年退職後 読み取れる生活の変化と対策

 
定年退職後の無職生活の変化
   テレビを見て過ごす時間が多くなる
   その他、趣味、休養・くつろぎ、買い物、家事、受診・療養の時間が占める
   全体的に自主生活となり、目的設定がないと意欲/運動量/時間管理が低下する
 
生活変化を減らす方法、すなわち「生活充実度」をあげる努力をすること。
   意欲の低下を防ぐ
   運動量を維持して筋肉量を減らさない
   食生活に気をつける
   時間に対する意識、規則正しい生活を心がける
   目標設定、存在意識を保つべく、社会との繋がりを意識し参加する
   活動的であること、健康的であることを意識する
 
要約すると、規則正しい生活の中で、しっかり食べてしっかり動き、ジッとしてたりボーっとしている時間を減らしてヤル気をもって生活することです。これは介護に移行させるフレイル(老人虚弱状態)の要因をブロックするのに役立ちます。そして夜間頻尿の改善にも役立ちます。
 
なお、女性は夜間頻尿は男性ほど多くありません。男性は前立腺肥大症に伴う過活動膀胱症状もあり、その影響があるからかも知れません。私見ですが、女性は高齢者になっても生活様式変化の落差が男性ほど大きくないため夜間頻尿がひどくならないのかもしれません。夜間頻尿ガイドラインの疫学調査によると、3回以上トイレに起きる夜間頻尿は、60~70代では男性の30%、女性の15%と言われています。

夜間頻尿ガイドラインの疫学調査

2002年11月から2003年3月に日本排尿機能学会によって行われた疫学調査

 
夜間回数3回以上の割合は60歳代から急激に増加し、80歳代では男性は50%を超えています。

夜間頻尿ガイドライン疫学データを引用した年代別の夜間頻尿回数の実態

年代別にみると、明らかに夜間頻尿は歳と共に増え続け、膀胱機能が過敏になって行くようです。70代が夜間頻尿の潮目と言っていいでしょう。それをさかいに疫学調査では2〜3回以上に増える傾向があるのは明らかです。これは、全般の傾向として、膀胱の血流が減ったり、肥大症などの影響で膀胱が疲弊し、さらに体力、生活意欲が減少していく様子を示唆するものだと考えています。

夜間頻尿を形成する3要素とその周辺 (私案)

この図は、夜間頻尿の構成要素である「膀胱」「尿量」「睡眠」に関わる外郭因子を私案としてまとめ、これに従って「薬物治療」と「生活指導」をしています。
 
  今回の日本排尿機能学会で発表した内容は、薬の調整で夜間頻尿を減らすには限界があり、生活指導を追加することで非常に良い結果を得られたことです。個々の患者さんに適した生活指導の追加で、「6割の肥大症患者が本当に夜間頻尿が1回以内にできるのか」と疑問を持つ人もおられると思います。若い人と退職後の高齢者とどこが違うのか、病気も増えるけど、生理学的機能や生活行動も緩やかになっています。それをもう一度活性化すれば、尿量も睡眠もコントロールできるのです。また、季節に合わせて身体を適応させて行くことも必要です。患者さんに近い立場にある開業医の特徴を活かし、夜間頻尿を改善するよう、日々忙しい診療をこなしています。
  この発表は、その成果をまとめたものです。2回以上の尿意覚醒後排尿は全体の約30%でした。夜間多尿が原因で夜間何度も起きる夜間多尿の人は、普通では治療中においても2回以上の夜間頻尿の約70%が夜間多尿によると言われていますが、当院の通院患者さんには多くないと思います。薬の服用で排尿障害をコントロールし、生活を立て直し、意欲を持って日常生活でよく動き回れば、自ずと尿量と睡眠の自己管理で夜間頻尿が改善するのです。
難治性の場合は、排尿日誌や種々の原因を探る必要があります。当院集計では3回以上の難治性夜間頻尿は全体の7〜8%にしか過ぎませんでした。

夜間頻尿回数は水分管理、睡眠が関与する.

  泌尿器科疾患による残尿、膀胱刺激、膀胱容量が関係します。
ただし、薬のみによる治療は、確実に減少させうる回数は文献的にみると平均で1.5回未満が限界と言われ、不安定でありやや不十分な結果に終わっています。海外の有名なコンバット試験でも夜間頻尿は0.5回しか改善しなかったとのことです。これは、夜間頻尿が、泌尿器科疾患だけでなく様々な要因に影響されているためです。そのため、行動療法を追加することが推奨されています。
 
  この行動療法の内容は夜間頻尿ガイドラインにも規定されておらず、それぞれの施設で工夫して行われていると思います。当院の行動療法としては、総合的な「生活指導と自己管理」 です。
   私見ですが、水分管理は、夕方からの活動状況や深部体温の状況が重要です。チェックポイントは不感蒸泄の量などと水分摂取のバランス、尿の色。
睡眠では、深睡眠の時に発汗/不感蒸泄が多くなることもあるため、深睡眠が必要です。これらの点について、個々に徹底した生活指導を加えています。
 
  当院は薬によって残尿を減らしつつ、膀胱容量を拡大し1回尿量を増やすように維持します。そして、生活指導によって患者さんが尿量と睡眠を自己管理できるようにします。両者の共同作業によって、安定した「夜間頻尿の減少」が実現可能となります。それらの生活改善の努力をしても夜間頻尿が残るのであれば、コミュニケーション不足など、その対策を行います。また、意欲の低下、長い睡眠など、プレサルコペニア、プレロコモシンドローム、プレフレイルの影響が考えられ、その進行を防ぐ生活指導が必要になってくると思います。
 
  また、中途覚醒が生ずるのであれば、それを眠剤に頼らず生活の見直しで減らしていきます。この生活指導は、生活習慣病を予防/改善するアプローチにもなると思われます。夜間頻尿は死亡率だけでなく、健康的老後の生活のバロメーターになると考えています。

  例外として、下肢のむくみをきたす疾患、無呼吸症候群など、他に治療すべきものは他科に委ねる判断も必要です。

夜間頻尿とフレイル

夜間頻尿とフレイル(高齢者の虚弱状態)

  最近では、前立腺肥大症の夜間頻尿に関して力を入れており、多くの患者さんに好評です。夜間頻尿の改善には投薬だけでは限界があり、生活指導による医師と患者さんの共同作業が重要です。私の実践する生活指導は夜間頻尿だけでなく、今流行りの「フレイル(高齢者の虚弱状態)」の予防にも共通項があり、その予防にも最適と考えています。フレイルの予防には「運動」「精神性」「社会参加」が有効であると言われています。それらは夜間頻尿の改善にも効果的です。

 

「夜間頻尿の改善」に有効と思われ、当院で意識している項目を挙げてみます。

①代謝が全般的に落ちているか

      筋肉量(基礎代謝)、意欲低下(生活活動代謝)

      食欲低下(食物誘導熱産生)

②動かないので眠りが浅くなるか(中途覚醒)

③水分の保水力が低下しているか(筋肉量の低下)

④外界への対応能力、適応力が低下し、温度変化に影響される。生活の工夫ができなくなっているか。(季節順化)

⑤意欲が低下しているか(精神性の低下)

以上を改善する努力が必要であり、その他に、社会性の回復(目標設定の回復)が必要となります。これらを生活指導し、個々の自己管理目標としています。

 

  夜間頻尿の改善のための自己管理が可能になれば、生活習慣病の予防にもなり、元気を取り戻す大きな目安になると思います。詳しくはホームページに徐々に記載するつもりですし、ご興味のある方は是非ご来院ください。泌尿器科は尿量の管理などから身体の健康を取り戻し健康寿命を伸ばす一翼を担う、一般の人のための科でもあります。  

  当院は泌尿器科の観点から「性生活」や夜間頻尿から「健康寿命」を支え、地域の「健康ステーション」をめざします。

「実地医療におけるMaleLUTSの夜間頻尿(院内調査)」学会発表スライド

第25回日本排尿機能学会演題抄録(上記スライドで発表)

実地医療におけるMaleLUTSの夜間頻尿(院内調査)    2018年9月27日

          注釈    Male LUTSとは、男性で排尿症状持つ患者さんのことで、大半が前立腺肥大症です。

 

【目的】当院の夜間頻尿治療に関する効果を知るために、通院治療中の患者の実態調査を実施した。背景に、外来診療で夜間頻尿がどの程度でコントロールされ、維持されているのか、あまり統計的な目安、目標などを知りえない。そこで夜間頻尿診療ガイドラインに記載されている疫学調査データと比較して検討を試みた。

【対象】対象者は、当院に通院する前立腺肥大症がほとんどを占めるMaleLUTS患者で、少なくとも2ヶ月以上通院し薬剤の継続処方を受けている、急性期を脱している症例群である。20183月、4月の一斉調査で該当646例に行った集計で報告する。年代構成は70代が約半数、80代が3割、ついで60代の順であった。 

【方法】対象者に対し、アンケート後に診療時の対面調査で夜間頻尿の詳細を聴取した。調査内容は、1)睡眠中断をした夜間排尿回数、2)排尿動機として尿意覚醒後排尿か中途覚醒後排尿の区別、3)前立腺体積を、30cc未満、30cc以上60cc未満、60cc以上の3群に分けて検討した。

【結果】調査結果は、ガイドライン記載と同様のデータ表現で示すと、1回以上85%2回以上37%3回以上7%となった。年代別では、年代が増すに連れて治療に抵抗性を示した。この時季の意識調査では、中途覚醒後排尿は25%含んでいた。体積別では、むしろ大きな体積の群に夜間排尿回数の改善割合が良好な傾向がみられた。

【考察】当院の薬物治療と生活指導による夜間頻尿は、その効果において、同年代一般人疫学調査データより、良好な改善が得られていることを確認できた。当院データの分析の結果、尿量の抑制を考慮する他に、中途覚醒後排尿を減らすような、眠剤に頼らない生活指導も必要とおもわれた。

【結語】実地医療では薬剤調整に限らず生活領域の指導で出来るだけ夜間頻尿を抑え、満足度をあげることが目標となる。当院は生活指導で今回の調査結果を生かし、生活管理を個々にオーダーメイドで指導してく方針である。

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