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診療日記

診療日記 ( 一開業医の診察室)

体積97mgの通院の前立腺肥大症患者(67歳)との問答を紹介します。『前立腺を盆栽風に管理します。』の意味。

2023-11-07
前立腺肥大症の人、必見! 『前立腺を盆栽風に管理するイメージを持ってください。』とは?
大きな前立腺肥大症の患者さんとの問答の一例を紹介します。
尿は正常、ベットに寝て超音波検査で前立腺体積と残尿を測ります。前立腺肥大症治療薬と過活動膀胱治療薬が長期的に処方されています。  体積97㎤、残尿20cc 

「残尿を測ります。体積97㎤、残尿20ccです。」
「排尿の勢いは良くなってますが、この検査は何のためですか?」
「膀胱刺激の蓄尿障害治療と前立腺肥大症の排尿障害のバランスが取れているかどうかを残尿の量で評価します。
残尿が多く、出にくければ前立腺治療薬を強めます。残尿が少なく尿もれや尿意切迫が強ければ過活動膀胱治療薬を強めます。だから、残尿の評価は大事です。」

「夜間頻尿とも関係しますか?」
「バランスが取れていれば、残尿が少ないだけ回数も減るはずです。」
「でも、尿意切迫がないのに2〜3回は夜間頻尿が残りますが?」
「それは、生活の自己管理が不十分なためではないですか?」
「水分の摂りすぎとか寝つきが悪いせいですか?」
「それもあります。しかし、生活のおおもとで代謝が上がる生活ができていないからではないですか? 具体的には筋肉を動かして汗をかき、しっかり食べてぐっすり寝るように心がけることです。昼間座ってばかりいて、昼寝も時々していれば最悪です。じっとしている時は、筋肉、肝臓、脳で熱エネルギーを6割作り出し、運動すると筋肉で70%熱エネルギーを作ります。最も良いのは、デスクワークと運動をバランスよくリズムのある生活をするのがおすすめです。」
「なんでもバランスが重要なのですね♪」
「バランスさえ心がけていればいいのです。薬と生活の自己管理です。」

「現在のバランスが取れた状態がずっと続くわけですね?」
「ところがどっこい、80代に近づくと膀胱の過敏傾向が強くなってきます。80代から過活動膀胱症状の頻度が上昇してくるのです。その場合、過活動膀胱治療薬を強くしていく必要があり、バランスの取り方が難しくなってきます。これは、前立腺肥大症でない人にも同じことが言えるのです。快適な日常のためには80代は辛抱するか努力を要することが多くなります。」

「前立腺体積は正常の5倍程度ですが排尿は良好です。」
「ところで、私の前立腺肥大症は小さくなるのですか?」
「今、デュタステリドをいう薬を飲んでいます。これは野放図に育った前立腺肥大症を盆栽風にしているのです。」
「どんどんは小さくならないのですか?」
「その薬で、いわば、前立腺の葉っぱと増殖の芽を摘んでいる状態をイメージしてください。前立腺は平滑筋という筋肉と分泌腺から出来上がってます。分泌腺の細胞を萎縮させて小さくしているのです。約2割までは縮小効果がありますが、あとはそのままです。」
「それ以上小さくするには?」
「それは、手術です。盆栽の枝や幹まで切断するのです。薬では限度があるのです。薬では、大きく成長しないように盆栽風に管理するイメージです。どちらにするかは、患者さんの選択です。」
「前の病院で、このデュタステリドという薬は前立腺の癌の腫瘍マーカーPSAを下げるため、その発見が遅れる、と言って処方されなかったのですが? その薬の内服の意味は、盆栽管理ですか? わかりやすい例えですね。」
「約半分の値まで下がると言われてますが、6ヶ月に1度血液検査で経過をみて、一旦下がったPSAが上昇傾向になれば癌の可能性が出てくるので、その時に精密検査をすればいいと思います。定期的に手入れしているはずが、芽や葉っぱが異常に増え出し、PSAが上昇しだすと癌化に注意を払わなければなりません。大きな前立腺肥大症では癌の合併に注意することは必要です。なぜなら、大きなそれはPSAが高い傾向にあるので注意を払わねばなりません。肥大症部分の癌化は稀ですが、例外もあります。詳しく話せばキリがないですので、この辺で。」
「病院とクリニックでは対応が違うのですね。」
「病院はいつでも手術ができる体制があるので、大病院ほど処方しない場合が多いですね。一般の専門クリニックで治療管理する場合は、できるだけ手術を遠ざけ、前立腺の症状を安全に長期管理してしかも、PSAの反応をみて癌化の発見に対しても参考にしているのです。PSAの上昇傾向を確認できれば、触診、経直腸超音波検査、MRIの流れで精密検査を行い、疑わしければ針生検による検査へと進みます。また、最近の傾向として、以前ほど内視鏡手術の数が減っていることは事実です。しかし、内服管理が難しい場合や患者さんに手術希望のある場合は手術が選択されます。キリがないのでこれもこの辺で。」
「PSAを定期的に調べる意味と重要性がわかりました。そして病院とクリニックに対応の違いがあることがわかりました。ありがとうございます。」
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