前立腺がん2次精検施設
経直腸超音波検査で今思うこと
先日、超音波機器の業界の方と話す機会があり、思いを回らす機会がありました。
当院で新たに経直腸検査のできる機器を更新し購入したのですが、その設定条件と実際使用の設定のために数回足を運んでもらい、やっと、従来のように使用できるようになりました。当院では、開業以来28年以上、経直腸超音波検査で前立腺癌の2次検診を実施しています。経直腸超音波検査は年間200~300例ぐらいになりますが、PSAが4.1以上の人に行っています。これは、前立腺癌健診の2次検査で、触診と経直腸超音波検査が必須となっています。
経直腸超音波検査は、前立腺に近い直腸から超音波探触子を挿入し、前立腺の本来の外腺組織と前立腺肥大になる内腺を区別するので、前立腺外腺に多発する癌の部位の有無を探ります。更に、超音波で異常が見られた場合の確認の意味や、PSAがかなり高値の場合には触診も含めて異常が見られなくてもMRI検査を追加します。
こうして数多くの前立腺癌症例を発見し、治療紹介や自院でのホルモン療法も行っております。cこの超音波検査の利点は、MRIに比べて安価で泌尿器科開業医でも簡単に行えることです。当院では、PSA4.1以上の患者さんのフォローを6ヶ月に1回ペースで行っています。
最近の超音波画像は横断面、縦断面を綺麗に描出できるので、直腸側の外腺部分の癌部分は簡単に発見でき、触診と合わせて診断は簡単です。そしてターゲット組織生検で確定診断が可能です。当院でもターゲット生検が主目的で、他の場所の生検も追加しています。やっかいなのは前立腺前壁部分のもので、触診でも確認できません。この場合はMRIがその描出、診断に優れています。
今では大病院のMRI診断が診断の切り札であり、経直腸超音波検査は省略されつつあります。場合によってはこの検査を経ずにMRIで診断し、組織生検で確定診断がなされるケースが増えているようです。勿論その時には経直腸探触子の超音波機器を使用しますが、最近ではMRI画像と融合させた経直腸超音波生検が行われ、精度も向上しているようです。
そんな中で、組織生検を自院で行う泌尿器科開業医が多くないために、PSA高値で病院へ紹介される場合も多くなっているようです。機器メーカーはそのため経直腸探触子が売れる量が減っており、需要先の望んでいる診断時の画像描出設定についての販売時の誘動力が低下していることを今回の出来事で認めています。需要が減れば情報も積み重ねられないと言うことです。
しかし、組織生検のできる開業医であれば、通院者への利点もいくつか挙げられます。
- 高PSA症例に対し、MRIより低コストで6ヶ月ごとや必要時に容易に経過観察ができる。
- 局麻下経直腸生検等(8箇所)の処置は短時間の20分以内に終わり、止血点滴して終了。
- 当院では、手術の対象にならない人を選んで組織生検を実施している。手術対象は紹介。
- 前立腺PSA健診の2次生検施設としての専門性を生かせるし、集患にも役立ちます。
MRI融合超音波生検は大規模施設でしかできない技ですが、泌尿器科開業医にも生き残る経験と技術が求められており、生検機能を持つ純粋な泌尿器科単科開業は泌尿器科開業医の最期の砦の様に思えます。泌尿器科の専門性を生かした開業は次第に困難となっており、排尿障害を主体とした慢性患者数が比較的に少ないこと、性感染症は通院日数が少ないことで集患が思うようにならないという原因があります。よって、他科併設が安定に必要不可欠になっているようです。
茨木市のPSAがん健診の概略結果(2000年〜2008年の9年間平均)
●その期間の茨木市の平均人口26.7万人(平成29年現在 28万人)
●対象者の年間平均は35000人
●要精検者数の年間平均は591人 精検対象者 8.2%
●精検受診者数の年間平均は264人 受診者 44.7%
●癌発見数の年間平均は35人 精検発見率 13.3%
●当医院の年間登録平均は7人でした。